映画祭レポート⑥/特集「アニメーションとインディ・ゲーム」

ミヒャエル・フライ氏
 
 近年、目覚しい成果を挙げつつある動きとして、アニメーション作家によるインディーゲーム制作(個人制作・小規模チームによるゲームの開発および販売)がある。今年の映画祭ではこのインディーゲームに注目し、国内線2階センタープラザにて最新ゲームの体験ブースを展開。これに伴い、映画祭3日目、3名のゲストがそれぞれ自身の制作活動を語る、特集「アニメーションとインディーゲーム」が早朝より開催された。
 
 1人目は、短編アニメーション部門国際審査員であるミヒャエル・フライ氏による『アニメーションからゲームへ:ミヒャエル・フライの場合』。ミヒャエル氏は2015年、自身のゲーム『プラグ・アンド・プレイ』がインディペンデント・ゲーム・フェスティバルで新人賞にノミネート。同作品は、日本でも2016年の文化庁メディア芸術祭で審査員推薦作品となっている。
 

PLUG & PLAY – Prototype from Michael Frei on Vimeo.

 
 講演では、この代表作『プラグ・アンド・プレイ』の制作プロセスが語られた。本ゲームはもともと短編アニメーション作品として制作され、白の背景に黒い線のみで描かれた独特な印象の作品である。ゲーム版ではキャラクターのアニメーションをミヒャエル氏が担当、マリオ・フォン・リッケンバッハ氏がプログラムコードを書く形で制作された。
 

PLUG & PLAY from Michael Frei on Vimeo.

 
 ミヒャエル氏の作品は線画を基本とし、色彩を使用していない。これに対して観客から「カラーバリエーションに挑戦しないのか」と質問されるも、「色彩を用いることは好みではない。白と黒を基調としたときの限界を知りたかった」とのこと。
 
ミヒャエル・フライ氏講演中の様子
 
 また、2015年にSteam(個人でもゲームを販売できるダウンロードサイト)で販売を開始したところ、YouTuberらによるゲーム実況動画がネット上で大きな反響を呼び、売り上げにつながったという。「多くのインディーゲームは予算が少ない。彼らが実況動画をネット上に公開してくれることで、多くの視聴者に作品の存在が広まるのは素晴らしく光栄」と思いを語った。ミヒャエル氏は現在、最新作となるゲーム「KIDS」を開発中である。
 
デイヴィッド・オライリー氏
 
 2人目はミュージックアニメーションコンペティション部門の特別審査員を務める、アーティストのデイヴィッド・オライリー氏。CGアニメーションの革命児である彼は、インディーゲームの分野でも大きな話題を独占しつつある。本映画祭の短編アニメーション部門にノミネートされた『Everything』は、自身が制作した同名のゲームプレイ動画を基調とした異色の作品として、話題をさらっている。
 

 
 デイヴィッド氏は、まずアニメーションとゲームの違いについて、「ゲームというのは直線的なラインに沿っている。インタラクティブなアートもまた、次の次元へ導かれている。ゲームは物語の結末が特定のプレイヤーに従って作り出されており、信じられないほどの様々な可能性を広げてくれる。一方、アニメーションはフレームの中でのみ物語が進行されており、視聴者はこの物語に関与できない」と、ゲームが持つポジティブな点について挙げた。
 
 しかし、ゲームは制作する上でネガティブな側面も持つ。「アニメーターがゲームを作ることは非常に難しく、内容を伝えるために多くの技術を得る必要がある。例えばあなたが中国語で何かを言いたいとして、一度も勉強したことがなければまず中国語の基礎を学ばなければならない。身につけたとして、自信を持って話すまでにもかなりの時間を費やすからだ。アニメーションとゲームの関係は日本語と中国語のようなもので、同じ文字を使うように見えて、実際には違う言語を学ばなければならない。」
 
デイヴィッド・オライリー氏
 
 デイヴィッド氏は最後に、「人は簡単なアイデアを先に選んでしまう傾向がある。自分の中の声に耳を傾けても、最良の案を引き出すのは難しい。リスクを取るか、報酬を取るかによって作品の質も左右される。弱いアイデアを選ぶことは、自分の能力以下のプロジェクトを選択することと同じ。自分の能力は自分自身が知っているのだから、常に少し上のレベルを目指してください。そうすれば、能力と作品の質は強くなり高くなっていくだろう」と、制作姿勢の重要なキーワードを観客に送った。
 
 最後となる3人目は、有限会社キュー・ゲームスからクリエイティブ・プロデューサーのBaiyon氏をお迎えし、「インディーゲームのシーンで起こっていること/起こってきたこと」をテーマに講演が行われた。
 
左:フェスティバルディレクター土居伸彰氏、中央:通訳、右:Baiyon氏
 
 世界のインディ・シーンで愛され、日本と世界をつなぐキーパーソンであるマルチメディア・アーティストBaiyon氏。これまでオリジナルの楽曲を様々なメディアへ提供し、幅広いRemixを手掛けている。講演ではまず、自身がサウンドとアートディレクションを担当した「PixelJunk 4am」という、プレイヤーがDJの気分をインタラクティブに体感できるPlayStationソフトのトレイラーを上映。ゲーム名には、「プレイヤーに朝4時のDJの雰囲気を感じてほしい」という思いを込めた。「ライブやDJは言葉にする必要がなく、身体に形として感じるもの。自分にとってゲームは作るより、集めるという感覚に近い」そうだ。
 

 
 また、パソコンとiOSゲーム「FOTONICA」のトレイラーも紹介。本作品はリアルタイムでカメラの映像を取り組み、サウンドを混合させることで人工的にゲームの世界観を作り出している。「1秒だけの体験でいい。体験できるということが素晴らしい」と制作プロセスへの想いを語り、アニメーション作家が作るゲームに関して「ゲーム業界をもっと大きく変えてほしい。(中略)インディ・ゲームはメディアとしてのゲームではなく、短編アニメーションよりは長いが簡潔で面白い。モデルのビジュアルやシチュエーションによるが、自由を確保する上でコンパクトに作ることができる」と独自の観点を挙げた。
 

 
 3人のキーパーソンによる長時間のトークは、会場を訪れたアニメーターやゲームクリエイターの意欲を掻き立て、今後もインディ・ゲームシーンがますます面白くなることを期待せずにはいられない。(編集局ボランティアスタッフ)