映画祭レポート⑦/メイキング・トーク「『ハリネズミの家』から『ハリネズミの家』へ」
『ハリネズミの家』で実際に登場する人形たち
映画祭3日目、短編アニメーション部門ファミリープログラムで上映された『ハリネズミの家』の監督エヴァ・ツヴィヤノヴィッチ氏を迎え、自身の作品背景を語るメイキング・トーク「『ハリネズミの家』から『ハリネズミの家』へ」が開催された。
エヴァ氏はクロアチア出身。大学卒業後に2本の作品を制作し、人形アニメーションをはじめ、ドキュメンタリーからビデオゲームまで幅広く活動する作家である。
『ハリネズミの家』はカナダ国立映画製作庁(通称:NFB)とボノボスタジオ(クロアチア)との共同制作による作品であり、バルカン半島でよく知られたおとぎ話が原作である。本作品は一般公募されたこども審査員が決定する「キッズ賞」を受賞し、観客の中には親子での来場も多く見られた。
Hedgehog's Home (Trailer) from NFB/marketing on Vimeo.
作品内で使用した人形や背景は全てフェルトで制作されており、エヴァ氏は「フェルトを用いることにより、題材である“家”の温かさを連想させている」と制作意図を語った。また、フェルトだけでなく、照明を使用し光の使い方を工夫することでキャラクターたちの心情を表したとのこと。キャラクターたちは二足歩行で行動し、どこか人間味ある豊かな表情を持つ。原作のおとぎ話が人間に対する寓話でもあることから、物語の奥底にある怖さを観客に伝えたかったという。可愛らしさの中にある現実味を帯びた世界観が、より一層物語を引き立てているのだ。
左:通訳、右:エヴァ・ツヴィヤノヴィッチ氏
プログラムではメイキング映像と共に本編も上映。上映後のQ&Aでは早速子供たちが手を挙げ、エヴァ氏に「森の植物はどれほどの数を制作したのか」、「絵本を読んでみたい」など、積極的な質問や感想を送っていた。本作品に込められた監督自身の故郷クロアチアと“我が家”への思いは、最後まで会場の雰囲気を温かく包んでいた。(編集局ボランティアスタッフ)